ブログ引っ越しのお知らせ?

完全に移転するかは未定ですが、今後はnoteの方で記事を書いていこうかと考えています。このブログ自体は残しておくつもりですが、ひとまず過去の記事を微修正してnoteの方でも公開していますので、見やすい方でご覧いただければと思います。

 

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3年前期授業雑感 ②選択科目編

 前回に引き続き、こちらでは選択科目について詳しく紹介していきます。

 

 

 

民事弁護実務演習

 弁護士の先生と一緒に訴状や答弁書などを作る授業で、売買契約や請負などの民法上の重要な論点について要件事実を調べて訴状と答弁書を作成したり、消費者訴訟や会社訴訟に関する意見書、遺産分割協議書、競売申立書などの実務で頻繁に使う書類の作成方法を幅広く扱います。春休み中に全クラス共通の問題集が配布され、初回授業で各課題に対して1~2人の担当者を決めて起案します。
 1クラス15名前後の人数制限のもと10クラス開講しており、担当者が発表前週金曜までに起案を提出したらレジュメと参考起案が配布されるという流れになっています。それぞれ別の先生が担当しているため授業の進め方等も若干異なり、他のクラスでは授業前にレジュメと参考起案が配布されて担当者の報告後に講義と若干の問答が行われてたようですが、私のクラスでは基本的に担当者の発表もレジュメと参考起案の配布も無く、最初からクラスの全員で訴訟手続の流れや必要な条文と判例に関する問答や議論をがんがん行っていたので全員が事前に事案を読んで課題の解答を考えてくる必要がありました。もっとも、課題類似の裁判に関する実務でのエピソードや訴訟戦略についての話も多く、今まで勉強したことを実際に仕事で使うイメージを持つことができ非常に有益な授業内容になっていると思います。(余談ですが、私が原告側で起案したある課題の元ネタになった裁判では担当の先生が被告側の代理人として戦っていたうえに納得できない負け方をしたらしく冷や汗が出ました...)
 起案にあたっては当事者の言い分や事案の概要に加えて全部事項証明書や固定資産税評価証明書などの添付資料を読み込み、依頼者の要望に応えるように主張を考える必要があるほか、印紙代の細かい計算や裁判所提出書類の種類と部数の書式を根拠法令と合わせて調べなければならないので、全て自力でやろうとすると相当きつい授業になると思います。もっとも、課題により難易度が全く異なるので簡単そうなものを選択したり、休講などで頻繁に回が前後するため別クラスの人から参考起案等を見せてもらうなど、工夫次第で楽もできる授業だと思います(実は過去の課題を微修正して使いまわしているので前年度の起案例があればコピペして人名と数字いじると一瞬で起案が終わる凄まじい楽単に豹変するんですが...)。
 成績評価については任意提出も含め一人当たり5回以上起案を提出すれば単位が認定され、試験がなく他の科目への負担も少ないので非常におすすめな授業です。このほか、私のクラスでは担当のNSD先生主催で先輩弁護士との食事会があったり夏休み中に事務所見学会を開催していただいりしたので、履修登録の際には担当の先生が所属する事務所を調べてクラスを選ぶのもいいんじゃないかと思います。
 

倒産処理法1

 司法試験選択科目である倒産法の授業であり、前期の1では倒産法の全体像を概観したのちに破産法のうち法人破産を主に扱い、個人破産及び民事再生法等は後期の2で勉強することになります。この授業の特徴としてロースクール独自の科目ではなく学部と共同で開講されており、学部生と同じ資料を用いながら初歩的な理解を得ることを主眼にした講義が行われるので、学習経験のない人でも気兼ねなく履修できるのではないでしょうか。なお、共同授業なのもあってかローの授業にしては珍しく出欠要件も問答も無く、試験一発の純粋な講義形式です。
 百選以外に教科書などは特に指定されず任意のものを使用することができますが、レジュメが非常に詳細なので無理に基本書を買う必要はないように思います。また、授業範囲が法人破産だけでありストゥディアなら全部で100ページ程度しかなく最低限のインプットを簡単に終えることができるので、本格的に破産法を扱い始める第2~3回までに授業範囲を条文を引きつつ読んでおけば事前学習は充分でしょう。
 期末試験との関係では、私はストゥディアと百選を読んで司法試験の過去問を解き、判例六法に出題された判例や条文をマークするようにしていました。破産法は単に知識量を増やしても条文操作に慣れていないと事例問題が全く解けないため、最低限の基礎知識と考え方を勉強したら極力早めに条文を使う訓練に着手する必要がありますし、法人破産の問題は事例の処理方法や分析スキームがある程度決まっており、解答パターンのストックを増やすためにも早期から問題演習に取り組んで必要な知識はその都度仕入れる方が良いのではないかと思います。過去の期末試験でも司法試験で実際に出題された論点を簡略化した問題が出題されていますし、司法試験で選択する予定の人は普段どおり勉強していれば特別な対策は不要でしょう。
 例年の期末試験を見る限り、多少の違いはあれどオーソドックスな事例問題になっているようで、破産手続の開始前後の典型論点と終了時点の具体的な処理プロセスを条文を示しつつ答えさせるといった法人破産の全体像を正確に把握しているかを問うていると思われます。KSI先生の採点は少し甘めなようですが、いきなり破産法の論点を書くのではなく、まず民法上の法律関係を正確に指摘したうえで破産法が適用される結果どのような解釈問題が発生するのかを丁寧に説明する必要があるようで、それができれば論証部分で多少不正確なことを書いても安定して点数が付くように感じました。事例分析の方法と答案の書き方はアガルートの司法試験過去問解析講座の問題集で勉強していましたが、解説が丁寧で論証の百選へのリンクも充実しているので授業と期末試験との相性もかなり良く非常におすすめです。
 

労働法1

 完全オンラインの授業で、労働関係の成立から終了までと賃金、労働時間あたりを扱います。本来は労災や人権保障なども範囲に入っているのですが時間の都合で例年あまり扱えていないようで、今期は補論としてレジュメを配布して夏休みの自習に委ねることになっていました。
 担当されたUEMR先生は講義も非常に分かりやすいのですが、レジュメが本当に素晴らしいです。情報量が多い割に要所要所でしっかり要約されているのでスムーズに読み進められますし、事例が多用されており具体的なイメージが掴みやすいのも相まって他に何か文献を漁りまわることはほぼ無かったと思います。事前知識がほぼゼロだったので一応プレップを用意していましたが講義だけで充分スムーズに学習できたので結局使う必要がありませんでしたし、労働法選択者でないなら入門書や参考書の類は不要なんじゃないでしょうか。
 期末試験対策としては水町ほか事例演習労働法を使っていました。例年はしっかりした事例問題が1~2問出題されていましたが、今年度は細かく小問が分かれた作りに変わっていたうえに部分的に知識を問う一行問題のような出題もあり、司法試験過去問や問題集ばかりを勉強するよりはレジュメをしっかり読み込んで基礎的な理解を固めたり重要論点に関する判例・裁判例の変遷などを簡単に説明できるようにしておくと良いと思います。
 

環境法1

 前期の1では環境行政の基本原則と主要法令を概観し、環境訴訟は後期の2で扱います。要するに、環境法の総論的な解説と司法試験で使うことになる環境基本法や水濁法や廃掃法などを概観して法律の仕組みや用語を理解しようという授業ですね。かなりの分量になるため講義も削りに削って駆け足になった結果、最終的な試験範囲は環境基本法・アセス法・大防法・水汚法・土対法・廃掃法だけでした。それでも多かったので期末直前は死ぬほど大変でしたが...。
 授業は講義形式で、各回ごとに講義資料としてレジュメや図表に加えて予習指示書のようなものが配布されますが、特に問答がある訳ではなく基本的に担当のSMMR先生のお話を聞いてノートを取るだけです。扱う分量が多いのでメリハリをつけて学習するためのアドバイス的なものという位置づけになるでしょう。教科書は北村先生の環境法が指定され、適時加筆修正しつつ輪読会のような形で授業が進みます。このほか、媒体は何でもいいので環境法令をすぐ参照できるようにしておくよう指示されますが、デイリーには載っていないため紙媒体ではなくe-Govなどネットを利用している人が多かったと思います。私はメ○カリで過去の司法試験法文を購入して環境法のところだけ裁断して書き込みしつつ使っていました。
 期末試験については、授業で扱った法律の改正経緯や構造を説明させる問題と事例問題が出題されます。去年までは環境訴訟まで試験範囲だったので提起すべき訴訟の種類などを問うていましたが、今期からは司法試験の1問みたいな改正経緯説明と初見の法律を現場で分析して環境政策の類型を答える問題に変わりました。そのため、授業でも各法律の改正経緯に関する説明は一層注意深く聞く必要があるほか、総論部分で説明させる環境政策手法の種類と特徴に加えて具体的な法律のどの条項がそれを反映しているのかまでを意識的に学習すると良いのではないかと思います。採点は結構辛口で、講評でも明確に配点や評価基準と書くべき内容が決まっており、何かしら書けば点が来るようなものでは無いようです。
 
 最後に、これは授業でなく環境法という選択科目に対する愚痴になってしまうのですが、とにかく教材の選択肢が少ないです。問題集もなければ一問一答のように知識確認ができる教材も無く、さらに頻繁に改正が入るので対応した参考書も選択肢が限られているなど、私のように教科書を熟読するだけでは何も頭に残らない人間にとってはかなり苦しい科目でした。問題集は司法試験の過去問を使うくらいしかないのですが、比較的安価に入手できる辰巳の一冊本(それでも4800円)は古い過去問の解答に改正が反映されていなかったり条文の指摘が不正確だったりと使いにくく、予備校講座に課金するほどの余裕も無かったこともあって問題集利用の勉強は諦めざるを得ませんでした。また、北村先生の教科書が個人的に肌に合わなかったのも辛かったです。大半の人が利用しており定評ある素晴らしい教科書だとは思いますが、記述が法律論というより政策論的(ときおり情緒的)で分量が多く、先生ご自身の見解と法令の事実的な説明が混在しており読み取りにくく感じたことも相まって、他の科目で解釈論を詰めていると頭の切り替えが難しく余計に話が頭に入ってきませんでした。
 そこで、途中から教科書を大塚先生の環境法BASICに切り替えて事なきを得ました。同書は条文とその趣旨の解説から用語の定義という記述の流れが綺麗にまとまっており簡易的なコンメンタールを読む感覚で利用できるほか、改正経緯を端的に指摘したあと新旧対照表を用いてまとめており視覚的に条文の違いを確認でき、これら全体のサマリーとして法令の重要項目を章の最後数ページに要約されているのも復習に便利だったと思います。そして何より、要所要所でQという一行問題的な問いを立てて続く記述が解答になっているのが非常に助かりました。司法試験で過去に問われた論点だったり改正の重要な変更点や法令同士の仕組みの異同などの試験で問われやすい部分をピックアップして問題と解説の形にしてくれているため事実上問題集の代わりとして活用でき、おかげで単に読み込むのとは違う頭の使い方で学習が出来てかなり理解が深まったと思います。このほか、見た目は分厚いものの実際は環境訴訟を除く環境法1の範囲に関する部分は200と数十ページ程度に圧縮されており、直前期に試験範囲を短時間で復習できるところもおすすめポイントです。
 

企業法務1

 隔週開催で2限連続の授業で、長年法務部で企業法務を担当されていたSMOK先生が内部統制システム構築や株主総会運営の実務的な問題について解説したり、現役法務部員や役員の方をゲストスピーカーに招いて講演をしたりします。パワポで資料が配布される講義形式で、課題や出欠などはなく試験のみの成績評価です。
 授業範囲だけならそれなりに広く資料も膨大ですが、期末試験については内部統制システムなどと取締役の任務懈怠責任に限定されるようなので、試験対策として勉強すべき量は非常に少なくなりました。企業法務の実務的なことよりは商法総合で習った会社法の知識を使って近年問題になっている国際的な法的紛争の解決を試みたり、法務部員として健全な企業の運営を実現するために出来ることを考えるといったコンセプトの試験になっているように思います。
 特に教科書などはなく、レジュメ以外では期末試験対策に商法総合で使っていたテキストなどを参照した程度でした。
 

伝統中国の法と裁判

 古代から清代までの間で中国の法制度の成り立ちや変遷、統治制度の考え方などを学ぶ授業です。授業は講義形式で、問答や出席要件もない試験一発評価になっています。よく楽単といわれるようですが、個人的にはあまり楽には感じなかったです。
 授業の資料として2枚程度のレジュメや数百年前実際に使われていた法典の写し等が配布されます。レジュメは用語の羅列や漢文の現代語訳が引用されている程度の簡素な作りであり、講義をとおして当時の価値観などの時代背景を踏まえて敷衍した解説を聞いていくと意味が分かるようになっているので、ちゃんと授業を受けてノートを取らないとあまり使い物にならないと思います。もっとも、それ以外に参考文献にあたったり特別な準備をしないと話が理解できないようなものでは無く、期末試験の問題も基本的に授業内で扱ったことを説明すればよいため、授業を真面目に受けるだけで一応の勉強は完結するという意味では楽な授業かもしれません。
 試験の内容は、例年1~2題の一行問題が出題されます。授業ノートを復習しておけば普通に解けると思いますが、世界史の知識があるとより書きやすいかもなと思いました。私は特に世界史に詳しいわけでもなく、帝制下の統治観をきかれてもよくわからなかったので蒼天航路で読んだ曹操が漢の献帝と天道の何たるかをごちゃごちゃ語ってたくだりをそれっぽく修正して法の役割と絡めて書いたら単位が来ました。やはり楽単では?
 
 記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました!

3年前期授業雑感 ①基幹科目編

 お久しぶりです、単位稼ぎも兼ねて面白そうな選択科目を片っ端から履修してみたら期末試験で地獄を見た凡骨です。なんだかんだ単位は全て取れてましたが、来期も同じくらい履修しないと卒業できないので今のうちに遺書をしたためておこうか迷っています。みなさま履修は計画的に。

 さて今年から在学受験が始まり、ただでさえ忙しいなかで各基幹科目が週二回に増えたのもあって可能な限り早めに単位を稼いでおきたいところですが、選択科目は基幹の陰に隠れがちなうえに開講数も多いので詳細な情報が手に入りにくいように思います。ということで、今期いろいろと死にかけた履修した結果を共有して、授業の雰囲気や留意点などをお伝えできればと思います。私みたいにアホな履修を組まずに済むよう反面教師にしてください。

 長くなってしまうので記事は2つに分けて投稿しています。ひとまず今回の基幹は2年後期と授業の進め方が同じだったり今年度からの新しい授業で今後内容が変わり得ることなどもあるため軽く済ませ、次の②選択科目の方を詳しく書いていきたいと思います。

 

 

 

民法総合3
 債権総論と担保物権をメインに、ときどき時効や利息なども扱います。既に他の方が書かれているように、これまでの民法総合と異なり要件事実論には深入りしませんし、配布資料も課題以外は断片的な補足説明等にとどまります。要件事実表の類も一切配布されないため、予習はほどほどにして先生の解説をしっかりノートにまとめて復習しましょう。
 ソクラテスは教室の半分が範囲指定され、その中をランダムに進みます。今年度から授業が週二回になり毎週確実にどこかで当たるため大変でしたが、授業内容が高度なためか問答自体は確認的なものが多かったと思います。問われることも基本的な知識が大半で、応用的な部分は先生の方から解説することがほとんどでした。ひとまず、指定された判例と類型別の該当部分をちゃんと読み、ストゥディアレベルの知識を確実に理解しておけば最低限の水準はクリアできると思います。
 
 
民事訴訟法総合2
 最初に民事執行法について講義があり、次の回以降は訴訟の終了から再審までを扱います。使用教材や授業の進め方などは2年後期の民訴総合1と全く同じです。
 今回は既判力や共同訴訟など難解な分野を扱うこともあり、最新重判250よりも長谷部先生の基本判例から学ぶ民事訴訟法を利用して議論の前提にある初歩的な理解を確実にするようにしたほか、基本書も同じく長谷部先生のものを使用し、演習書はロースクール演習民訴で典型問題の解き方を確認したら重問で論点潰しをしていました。
 
 
公法総合
 今年から新たに開講した基幹科目です。従来3年前期に必修だった公法総合3が憲法の人権のみを扱っていたのに対し、こちらは憲法行政法の両方を組み合わせた科目であり、憲法では表現の自由や財産権などの重要論点を幾つかピックアップして掘り下げる一方、行政法は国賠と損失補償、情報公開や不服申立など手が回りにくい部分を扱います。
 まだ授業の実施方針が定まりきっていないように思え、学期の前半後半で分けるのではなく週二回の中で憲法行政法の授業を交互に行う変則的なカリキュラムであったり、そのせいで課題の提出期限がよくわからなくなる等、学生としては不便なことが多々あるように思います。公法系の授業は調べ始めると文献をいくら読んでも本当に終わりが見えなくなりますし、新しい科目とはいえ結局は普段使いの教科書や問題集をしっかり読み込み自分の学習ペースを乱さないようにするのが大事なんじゃないでしょうか。
 
民事法文書作成
 2年後期から続く隔週開催の授業で、4月頭に民事訴訟法、5月の終わりに民法を起案します。相変わらず問題は難しいですが、特別な対策をしなくとも中心的な論点を指摘して何かしら書いておけば落とすことはないのではないでしょうか。
 なお、3年前期の履修上限にはこの授業は含まれておらず2年後期分になっているので、履修を組むときは一応留意してください(在学受験のうえで上限フルで履修することは少ないとは思いますが...)。

2年後期授業雑感 その2【刑法・刑訴・法曹倫理その他】

 前回の続きで、こちらでは刑法・刑訴・法曹倫理・民事法文書作成等についての紹介です。

 

刑法総合2
 総論の共犯論と各論を扱います。前期と同様にケースブック刑法が指定され、授業の進め方も同じです。各論部分なだけあって前期より具体的なイメージが付きやすく勉強は進めやすくなったと感じましたが、分量が増えて予習の負担はそれなりに重かったです。細かい論点や学説も扱いますが、司法試験を意識した解説もあり、特に事例検討回は非常によい勉強になったと思います。
 予習と試験対策は徹底チェック刑法と十河先生の刑法事例演習をメインに、適時参考文献に指定された論文や判例を参照していました。悩みどころも役に立つんじゃないかなと思います。このほか、事例検討回では司法試験の過去問を参照するのがおすすめです。
 期末試験は毎回かなり難易度が高い問題が出題されます。学生があまり深く勉強しないような犯罪をメインに所々共犯や強盗などの重要論点が絡んでくるなど満遍なく論点を問われる傾向にありますし、2年連続で同じ類型の犯罪を別の観点から問うような出題をすることもあるのでヤマをはると痛い目をみるかもしれません。知識量よりは現場での思考力や処理能力を試されているように思え、初見の問題でも慌てずに基本的な検討手順(重い罪から軽い罪へ等)を崩さず条文を指摘し、事実をしっかり評価すれば一応の水準には達するのではないでしょうか。採点は比較的甘めですが、決して油断せず普段から事例問題を注意深く検討しておく必要があると思います。
 
 
 
 公判・証拠法・上訴を扱います。教材は前期と同様にケースブックを使用し、事前に授業で扱う設問が指定されます。訴因や伝聞などの主要な分野だけでなく公訴提起や科学的証拠などの細かい部分もしっかり勉強することになりますし、前期よりは問答も厳しく中途半端な回答ではなかなか放してくれません。とはいえ授業内容は素晴らしく、判例の精読をとおして事実の評価の仕方を深く学べるほか、理論的な説明が大変わかりやすいので論証をブラッシュアップするのに非常に役立ちました。前期のIKD先生は和やかな雰囲気だったのに対して後期のHRE先生は厳しそうな雰囲気でガンガン詰めて来るので緊張感がありますが、質問などでお話する際はとてもやさしく笑顔で対応してくださるので積極的に質問にいくとよいでしょう。
 予習の際は川出先生の判例講座や古江本が役立ってくれましたが、期末対策としては手を広げずに使い慣れた問題集と基本刑訴を何度も繰り返すのがおすすめです。可能ならば司法試験の過去問で事実の分析の訓練をしておくとなお良いと思います。
 試験は基本的な事例を捻った長文問題が出題されました。高度な理論を展開するよりは、典型とは少し外れた事実関係でも正確に分析して論点を洗い出し、必要な事実を拾って規範と整合的に評価することが求められているように思え、あまり理論を煮詰めるよりは問題演習を多くこなして処理の手順を身に付けておいた方がよいと思いました。成績評価は少し厳しめかもしれませんが、問題の所在を明らかにすることと基本的な論点の理解を正確に示すことを厳守すれば変な点はつかないと思います。
 
 
 
法曹倫理
 教科書は弁護士職務基本規定(通称緑本)と弁護士倫理(飯村ほか)が指定され、最初と最後の数回が講義で、そのほかは毎回与えられる課題を担当者が発表する形で授業が進みます。担当の先生により詳細なレジュメを配布してくれたり解説で済ませたりと差があり、課題の問題の解答例を入手できれば期末試験の勉強がぐっと楽になると思います。このほか高中法曹倫理が事例問題と解説の形式で勉強しやすかったので、私はこちらをメイン教材にしていました。ただ、期末の成績を見る限り件の解答例を使った方がいいかもしれません。
 期末では独立した短い事例問題が複数出題されるので、事実を拾って字数を稼ぐのが難しく、割と暗記が重要かもしれません。成績評価の実感としては、一夜漬けに近い勉強でも良い評価の人が居る一方で、しっかり勉強しているはずの人が単位ぎりぎりの点数をつけられたりと、なんだかよくわからないです。私は暗記を横着して規範を薄く事実を丁寧に、といった形で書いたところびみょーーな点数が来ました。
 
 
 
民事法文書作成
 2年後期から3年前期にかけて通しで開講される授業で、実務家の視点から民事の問題に対して解決策を提案したり準備書面を作ったりします。他の試験とは異なりロールプレイの側面が強く、あくまで依頼者の要望を叶えることを念頭にした解答が重要なようで、依頼者の不利になるような事実を拾って色々書いたりすると小言を言われます。科目により問題の難易度は異なり、特に民法はかなり難しかったです。
 成績評価は合否のみで、個々の起案は不合格の評価さえ受けなければ問題ありません。相対評価とはいえ評価基準も今のところ甘めで、全く何も書けないとかよほど変なことを書かない限り不合格にはならないと思います。だいたい2か月に1回くらいの頻度で実力テストを受けるようなイメージですね。
 
 
 
憲法総合
こちらの詳細は他の方の解説に委ねたいと思います。

2年後期授業雑感 その1【民法・商法・民訴】

 4月ということで、皆様におかれましては期待と不安と色々な思いで新学期を迎えていることでしょう。私はといえば残りの必要単位が多くて泣きそうになってます。どうしてこうなった。

 ということで3年生も全く余裕がなさそうですし、記憶があるうちに後期の授業雑感を書いておきたいと思います。またもや分量が多くなってしまったので2回に分けて投稿していきます。

 

民法総合2
 授業では物権法と不法行為法をメインに、相続法や不当利得を扱いました。
 課題として事例問題と事前解説が配布されますが、特に後者は一般的な教科書の内容を噛み砕いて詳細に説明してくれるので、授業後に配布される要件事実表とあわせて予習復習に大変役立ちます。また、これらに加えて先生により事前に質問する予定の内容が告知されるようです。
 授業内容については、物権法分野では相続法や総則等の関連分野と複雑に絡み合った問題を要件事実に沿って詳細に検討し、ある主張が攻撃防御構造上どのような位置付け(再抗弁か予備的抗弁か等)になるかを説得的に論じることが求められ、預金契約や混合寄託契約など普段あまり深く勉強しない論点も検討します。不法行為分野では、一般不法行為と共同不法行為のほか、名誉棄損と差止や医療過誤に関連するテーマまで幅広く扱いました。特に、因果関係や損害額の算定などでは判例通説と異なる理解を前提とした検討を要求されたりするので注意が必要かもしれません。
 教科書は特に指定されません。佐久間先生の民法の基礎2物権と潮見先生の基本講義を使う人が多いと思いますが、私の場合はとにかく授業が難解だったので、文献まであたり完璧に理解するよりは入門書で超基礎的なことを盤石にして発展的なことは授業で扱ったことに留める方針で臨みました。物権は松岡先生の物権法と択一六法、不法行為と不当利得はストゥディアを読み込んで、あとは事前解説と要件事実表で復習、たまに重問で問題演習していたら単位は何とかなりました。ただ、良い成績をとるなら物権・不当利得は重問を徹底的に解くのが有効なようです。不法行為は問題集も少ないので、基本講義を何度も読むか、旧試論文にあたってみるのも良いかもしれません。
 ソクラテスは名簿順ですが、私のクラスでは条文を答えたり簡単な説明で終わるので進みが非常に早く、2回ほどで1周してしまい逆に大変でしたね...。
 
 
 
商法総合2
 会社法事例演習教材の第2部を扱います。こちらは第1部と異なり会社訴訟の場面ではなく、紛争予防のための手続や制度の理解を深めることが主な内容となっています。授業内容は非常に高度で、会社法の隅々まで条文をひかされるほか、江頭や田中にも記載がないことをさらっと問われたりするので、完璧に予習するのは無理でしたね...。教科書類よりウェブで証券会社や銀行が公開しているファイナンスの解説が一番参考になったかもしれません。ちなみに、ここら辺は公認会計士試験のテキストが非常に詳しいらしいです。ただ、法律を駆使して依頼者の希望を可能な限り実現させようという問題設定自体は興味深かったですし、死ぬほど細かく条文を引かされたのもあってか会社法全体の理解が非常に深まったので大変満足度の高い授業だとは思っています(学期中は気が気じゃなかったですが...)。
 今までは第1部が司法試験に直結しており2部不要論まで提唱されていましたが、令和2年など近年の司法試験では2部の勉強内容そのものな問題も出始めているので、今後は注意深く勉強する必要があるかもしれません。
 その他、とにかく分量が膨大です。しかも手ごろな問題集がなく論証集も全く記載がないので一元化ができず、授業ノートを見直すほかありません。試験1か月以上前に復習初めても間に合うかどうかで冷や汗ものでした。私の場合はノートを見直す時間もなく読むだけじゃさっぱり記憶にも残らないので、苦肉の策で自力で一問一答のチェックシートだかサブノートだか分からない代物を作って直前期に見直し&関連条文にマーカー引いたカラフル六法をこしらえて期末に臨みました。単位は比較的甘めなようですが、可能な限り授業と並行して巻末の演習問題を解いたり復習可能な程度に端的なノート作りを心がけましょう。
 最後に、ソクラテスはどの先生も基本的に座席順みたいです。長々詰められることは稀ですが、進み具合が回により大きく違ったり途中でスタート位置が飛ぶ等で不意打ちを喰らうことがあるので注意が必要です。
 
 
 
民事訴訟法総合1
 第一審判決手続のうち、訴え提起から証拠までを扱います。計画上は訴訟の終了や上訴再審、複雑訴訟等は範囲外となってはいるものの、既判力や再審手続などは授業と関連する限度で取り扱われるほか試験にも出題されるので少々注意が必要です。
 教科書はケースブック民訴とロースクール民訴の2冊が指定され、判例を精読しつつ設問をひたすら解いていきます。全ての問題を検討する訳ではありませんが、それでも分量が多すぎて説明が駆け足になったり残部を自習に委ねることが多かったです。このほか参考書にリークエを利用する人が多かったようですが、私の場合は基本書類を読んでもさっぱりだったので主に山本和彦先生の最新重要判例250で予習復習をしていました。同書は授業で扱う判例の大半をカバーしており、解説も端的ながら非常に分かりやすく、設問の検討や講義の要点を把握するのに大変役立ちました。ただ、解説を一項に収める都合で簡潔すぎる側面があるのは否めず、基本書や百選の解説等で補完するべきかもしれません。
 試験対策としてはロースクール演習民事訴訟法が非常に役立ちました。民訴の試験は論点に気が付くことすらできないレベルで苦手だったのですが、同書は問題の難易度もちょうどよく、事実から論点を抽出する思考過程を丁寧に解説しているので事例問題の取り組み方を学ぶのに最適でした。なお、指定教材の方は「ロースクール民事訴訟法」で紛らわしいですが別物です。このほか、旧司の問題を改変したものが期末に出題されることがあるので参考にすると良いかもしれません。
 期末試験については、授業範囲の関係で出題論点が限られているためか重複起訴や弁論主義などの典型論点をかなり捻った問題と完全初見に近い論点不明なものがそれぞれ出題されることがあり、苦手な人だと論点に気が付くことすらおぼつかないかもしれません。R4年度は比較的簡単な方だと思います。ただし、採点は甘々なので基本的な論点をしっかり勉強すれば単位は心配ないと思います。ロープラでもロー演でも重問でも良いので、手を広げすぎず一冊選んで徹底的に勉強しましょう。
 ソクラテスは座席順でしたが、YMKT先生は完全ランダムなうえにガンガン詰めて来るので担当クラスの人は死ぬほど大変そうでした。なお、YMKT先生は来年度以降は基幹の担当を離れるようです。

2年前期の授業紹介と使用教材

 2年前期の授業もという声がありましたので、必修である基幹科目の授業を紹介します。さすがに前回までの投稿は長すぎたので、今回は授業雑感と使用教材についてざっくりと書いていこうと思います。授業については講義の概要とソクラテスの実施方法、教材は指定されたものと役に立ったもの等が主な内容になりますので、ご参考になれば。
 
 
民法総合1
・授業内容
 民法のうち、債権総論の一部と契約法がメインで、一部不当利得と総則を扱います。この授業の特徴は、複雑な事実関係や法律関係を要件事実に基づき整合的に論ずることが求められる点です。後述する基本書の類の記載を漫然と読み込むだけでは足りず、それらを訴訟物・請求原因・抗弁・再抗弁等として位置づけて理解することが必要不可欠であり、授業での問答や期末試験でも、一つの作法としてこれに則った解答が必要です。具体的には、問題となる条文を選択したうえで、その法律要件を主張立証構造に従い整理し、訴訟物は何か?請求原因は何か?○○という主張は抗弁か予備的抗弁か、などを答えていくことになります。なお、授業後に扱った分野に関する要件事実表やレジュメが配布されますので、事前学習段階で完璧に要件事実の整理が出来なくても、復習で理解すれば充分です。
 ソクラテスは基本的にやさしいですが、中途半端な回答ではなかなか放してくれません。ただ、厳しく追及される訳ではなく適切な順序で解答して欲しいという趣旨のようで、いきなり論点に飛びつかず、まず根拠条文をちゃんと指摘する、定義を正確に述べる等の当たり前のことを守ればいいので緊張しすぎないようにしましょう。たまに予想外のことを問われることもありますが、ある程度誘導もしてくれるので慌てず自分なりの答えを述べれば大丈夫です。
 当てられる順番は、YSMS先生なら座席の列か島をランダムに指定しますが、そのあとは座席順です。YMK先生は一定の法則があると言われていますが傍目にはエニグマ暗号機でも使っているのかってくらい規則性が謎だったので実質完全ランダムでした。なおYMK先生は来年度からは民法総合の担当から離れらるようです。
 
・指定教材
 特定の基本書は指定されませんが、プラクティス民法債権総論、基本講義(潮見イエロー)、中田債権総論・契約法、この他に類型別や新問研等が参考文献に挙げられています。要件事実対策として大島本を使用する人も多いです。
 授業では上記の書籍には記載のない要件事実を問われることが多く、私は東京弁護士会『債権法改正にみる要件事実 攻撃防御上の位置づけと論証例』、岡口要件事実マニュアル、要件事実入門を参照していました。また、司法試験の過去問と全く同じ論点が問われることが多く、復習も兼ねて起案するのもおすすめです。
 なお、高度な議論とはいえ、入門書レベルの基礎的な理解から条文を解釈し、要件事実論に従い整理することがコアになっていると思いますし、問答や試験も基礎事項の確認が主たる内容であり、闇雲に基本書を読むよりストゥディア契約法、債権総論、不当利得を読み込んで不足分は授業資料で補完するのが省エネでいいのかなと思います。ストゥディアは民法総合1の主な内容を策定した山本敬三先生が監修しており、平易な記述というだけで民法総合と重複する内容も多いので、かなり参考になると思います。
 
 
商法総合1
・授業内容
 会社法事例演習教材の第1部を扱います。事例に対して細かい設問をひたすらソクラテスで確認していきますが、問答自体はあっさりしています。
 第1部は司法試験に頻出の分野が主な学習範囲なこともあり、常用する論証をブラッシュアップしたり、あてはめで拾うべき事実や評価方法を詳細に教えてくれるなど試験対策としても有用でした。講義も非常に分かりやすいので会社法の理解が深まります。ただ、やはり扱う分量が非常に多くなり期末試験直前に復習できる分量ではないので、日頃から調べものはほどほどにして一元化をしていくことをおすすめします。
 ソクラテスは基本的に座席順に進みますが、先生によっては途中でスタート位置が変わったり回により進み具合が大きく異なったりするので予想が付きづらいこともあるようです。
 
・指定教材
 江頭会社法や龍田会社法大要が指定されていますが、頑張れば紅白本や田中会社法でも対応可能です。ただ、やはり江頭はあったほうが良く、後期でも頻繁に参照するのでいまのうちに買っておいてもいいと思います。また、会社法判例の読み方が参考になりました。
 このほか、岩谷『会社訴訟の要件事実』がおすすめです。会社法に要件事実は必須ではないものの、事例演習教材で問われる事柄は多岐にわたり膨大な知識が必要になる一方、これらも結局は条文同士の関係や個々の法律要件を訴訟要件のどこに位置づけるかに収斂されると思われ、その整理のためには同書が有用です。筆者の先生も司法試験委員の経験があり、記載も過去に司法試験で問われた論点に限定されている他、事例演習教材第1部自体が司法試験を意識した内容でもあるので、かなり復習が効率的になると思います。もちろん、これに授業の答えが全て書いてある訳ではありませんし、あくまで理解の一助として有用ということに留意してください。授業の一元化は任意の論証集やノートにして、同書でそれらを整理するといった使い方になるかなと。
 
 
民事訴訟実務の基礎
・授業内容
 裁判官の先生が担当する授業で、主に要件事実論を扱い、最後の数回で民訴の証拠(主に書証)や民事執行法などを扱います。予備試験の実務基礎科目の発展形ですね。授業自体は予習の負担も軽く、問答も確認的なものです。講義だけなら新問研だけでも対応可能だと思います。
 ただし、3.4回に1度の頻度で課される課題が非常に大変です。長文の事実を要件事実に沿って整理するものですが、非常に細かい要件事実を調べる必要があり、少なくとも大島本だけでは太刀打ちできません。みんなできないので適当なところで切り上げて提出していると思われます。ちなみに、本気で解こうとすると司法修習かそれ以上の知識が必要になると先生は語っていました。基礎体力作りのために、あえて難しくしているとのことです。
 また、期末試験も入学後に過去問を参照されるとわかると思いますが、およそ試験時間内に解けるものとは思えませんでした。というか仮に時間があっても解答用紙が足りなくなるような...。とにかく最低でも訴訟物と攻撃防御構造を絶対に間違えないように基礎的な理解を盤石にしておくことが重要です。
 
・指定教材
 類型別と新問研が教科書に指定されていますが、多くの人は大島本を利用しています。民法総合でも要件事実を扱うので期末対策としてはこれで充分かもしれません。
 私は、岡口要件事実入門司法試験予備試験出題形式編をおすすめします。民実では要件事実の理解の他、文書の作法が非常に重視されますが、同書はこれに忠実な書式で解説と解答例が付されており、かなり便利だと思います。掲載している要件事実も多く、授業対策にも試験対策にも役立ってくれるでしょう。このほか、参考文献として民事判決起案の手引きが指定されていますが、同書は巻末に要件事実に基づいた事実摘示記載例が付いているので、課題を解くときや試験対策で非常に参考になりました。
 ちなみに、課題があまりに難しかったので岡口要件事実問題集を参照しましたが授業の課題の方が難しかったですし、そこまでやるより大島本に書いてあることを全て即答できるようにした方がいいです。
 民事執行法民事保全法は、配布されるレジュメで充分ですが、不安なら和田先生の青い本がおすすめです。
 
 
刑法総合1
・授業内容
 共犯論以外の刑法総論部分を扱います。教材であるケースブックの設問は高度かつ難解で、一応は参考文献にあたったり基本書を複数冊読み込んで比較検討してもみましたが、私の頭では結局のところ何が何だかさっぱりでしたね。こうした教材の問題もあってか、先生により設問を大幅に修正・省略したり、そもそも独自の質問票を作成して配布するなど、学生の便宜をよく図っていただけます。
 判例を前提に主に学説議論に正面からかかっていくので、全部自力でなんとかするより先生の解説をちゃんと聞いた方がよく、予習に時間をかけるのは得策ではないように思います。基本刑法など普段から使っているものを読み込んでしのぎましょう。ケースブックの設問そのままの場合、本格的な基本書を持っていても複数冊参照しないと(しても)答えられないようなものが多いので、手を広げ過ぎると沼に嵌ります。悩みどころを活用しましょう。
 また、3,4回に1回の頻度で事例問題を検討する回があります。こちらは、まず問題になる論点を全て挙げて、次に個々の論点につき検討させる形で進みます。過去の期末試験や司法試験の類題、または完全オリジナルの問題が配布されます。あまり学説には踏み込まず、論点処理に重点を置いた授業になり、答案構成についても解説してくれることがありますので、頑張って取り組まれると大きな収穫が得られるでしょう。
 ソクラテスは基本的に名簿順ですが、年により変わる可能性があるので注意してください。
 
・指定教材
 ケースブック刑法が指定されます。総論部分は特に難解で、まともに勉強しても太刀打ちできません。山口刑法総論、西田総論、井田講義刑法学、問題探究刑法総論など複数冊を参照しましたが、これらを闇雲に読んでも意味は無かったと感じます。その点、橋爪先生の悩みどころが検討に必要なことを判例や有力な基本書、論文等から引用してくれているので、参考書はこれで充分かと思います。このほか、判例ラクティス刑法総論が予習で課題を解くのに非常に役に立ちました。あとは試験対策として十河先生の刑法事例演習が参考になりますし、徹底チェック刑法は極限まで圧縮した基本刑法といった具合に定義や構成要件、論証などが非常によくまとまっており、加筆修正により復習効率が大幅に向上したので大変おすすめです。
 
 
・授業内容
 捜査法を主に扱います。ケースブック刑訴の問いが事前に指定され、これにひたすら答えていきます。設問は相当細かく、基本刑訴やリークエでも足りないことが多いため、川出先生の判例講座が重宝します。問いの答えがそのまま書かれていることも多いです。問答まで完璧にしようとすると古江刑訴も必要になると思いますが、少々オーバースペックかと思います。そのほか、授業では学説や理論面の議論より、判例の事実を評価することに重点が置かれており、そこは試験対策としても有用です。
 ソクラテスはIKD先生なら座席順ですが、HRE先生だと、あいうえお順で一定の集団(か行・な行等)をランダムに指定し、あとは順番に進んでいきます。
 
・指定教材
 ケースブック刑事訴訟法が指定されます。教科書はリークエが参考文献に挙げられています。ただ、試験対策としては基本刑訴をひたすら読み込むので充分です。川出判例講座は設問を解くのには必須と言っていいでしょうが、試験前に復習するには情報が多すぎるので、普段から必要な部分を一元化しておくことをおすすめします。
 期末試験自体はそこまで変な論点を問われることはないものの分量が膨大で考えている時間が少ないので、あまり授業に深入りせず普段から基本的な論点を素早く処理できるように勉強しておくとよいでしょう。
 
 
行政法総合
・授業内容
 行政法の総論から救済法まで全体を扱います。ケースブックを用いて設問を解いたり、先生が配布する授業資料をもとに問題を検討する形で授業が進みます。内容は高度な割に行政法全体を扱うので個々の論点はあっさりで、授業だけではあまり身に付いた感じがしないと思いますので、しっかり自習しておきましょう。
 担当する先生のうち、SD先生が未修者向けに作ったオリジナル教材が既修者の間でも重宝されているようでした。ソクラテスは座席か名簿に沿って進みますが変則的で、一定まで授業が進むと講義形式に移行しました。
 
・指定教材
 ケースブック行政法が指定されます。掲載判例の数が多いのは魅力ですが解説はあってないようなものなうえに設問も良く分からないので、買ったはいいものの全く使っていない人も多かったと思います。判例学習は今なら中原先生の基本行政法判例演習があるのでこれもありですね。試験対策としては基本行政法と、可能なら事例研究を何回も読みましょう。
 
 
以上です。次回以降はまだ何も決まっていないので、気長にお待ちいただければと...。
 

未修1年次の授業紹介と入学までに準備しておくべきこと③【人権の基礎理論・法律基礎科目演習】

 今回は憲法のうち人権分野と、基礎科目ではないのですが必修科目ということで法律基礎科目演習の簡単な紹介をしていきます。未修1年次前期の授業紹介は、ひとまずこれが最終回となります。
 
 
人権の基礎理論
①授業の形式と内容
 憲法のうち、統治分野を除く人権分野から主要な権利を取り上げて基礎的な解説を行うほか、違憲審査基準論も扱います。
 授業の形式は、講義と問答の両方が行われます。民法のような法律構成の選択や事実の法的分析を延々と詰めていくようなものではなく、あくまで基礎的な諸概念の理解を問うとともに、判例をちゃんと読んでいるかの確認が主な内容としているのでしょうが、そもそも憲法は議論の抽象度が高く難解な上に学説も様々あり、判例も初学者には極めて読みにくく全文が異常に長いなどの事情もあって、初めて本格的に憲法を学ぶ人にはそうした基礎的な問答ですら相当な負担になると思います。完璧な予習は諦めて、いっそ先生と楽しくお話できればいいと割り切りましょう。
 例年憲法を担当される先生は非常に教育熱心な方で、難解な概念を極力噛み砕いて説明してくれるほか、自主勉強会も主催してくれるなど学生に様々な配慮をしてくれます。特に、理論的な事柄の説明が非常にわかりやすく、学生との問答で出て来たぼんやり断片的な話を法的な論理に沿って整理し、学生が適切に述べられるよう誘導してくれるので理解が捗ります。
 
 
②使用教材
・指定教材等
 教科書は特に限定はなく、佐藤幸治日本国憲法論』、毛利ほかリーガルクエスト『憲法Ⅱ人権』、新井ほか日評ベーシック(NBS)『憲法Ⅱ人権』などから任意のものを使うよう指示されます。判例集判例百選が主な教材として指定されるほか、松戸・初宿『憲法判例』や、憲法判例研究会編『判例ラクティス憲法』が挙げられています。
 
・その他
 百選だと事実の概要と判旨が短く解説も微妙なため、解説が充実している横大道ほか『憲法判例の射程』が人気だったほか、詳細な判決文にあたるために精読憲法判例[人権編]も使われていました。教科書としては安西ほか『憲法学読本』、伊藤・木下『基本憲法基本的人権』、答案の書き方に関する参考書として、玄唯真『読み解く合格思考憲法』がよく使われていたと思います。
 他科目ではアガルートの1問1答が有用でしたが、同シリーズの憲法判例の重要語句の穴埋め問題のような作りで、用語の定義や概念の端的な説明というようなものではないため未修の授業のお供としては少し使いにくく、情報の一元化はオーソドックスに論証集を利用するか、下記のように重問等の問題集を利用することで対応することになると思われます。
 上記の他にも様々な基本書があるので、メイン教材を何にするかは自分に合うものを選ぶことになるでしょう。ただ、未修1年の段階ではメインテキストはNBSやストゥディアにとどめ、適時判例教材を利用しながら問題演習を続けていくのが良いのではないかと思います。特に日本国憲法論に安易に手を出すのは避けましょう。
 
 
③事前準備と注意点等
・予備校を利用した授業の準備
 憲法人権も他科目と同様に予備校の入門講座や問題集を利用しておくことをおすすめします。先述のように、憲法は初学者には特に難解な科目であり、基本書を読んでも泥沼にはまるだけですので、ひとまず基礎的なことのインプットは予備校を利用した方が効率的でしょう。
 次に、問題集についてもアガルートや伊藤塾のものを受講するのがよいと思いまが、アガルート重問をめぐって少々議論があります。
 この講座は重要判例等を題材にして判例に沿った論証と処理をすることに重点が置かれていますが、いわば「判例判旨そのまま」の問題集になっています。そのため、司法試験との関係では三者間形式ともリーガルオピニオン形式とも問題形式が乖離しているほか、憲法という科目自体が単なる判例知識のインプットではなかなか過去問が解けるようにならないことも相まって使用を避ける人もいます。また、そうした特徴から他科目と異なり将来的に別の講座や教材を用いて単なる過去問演習以上の試験対策をする手間がかかることになろうかと思いますので、迂遠な学習を回避するためにも憲法は重問を使わず、より司法試験対策に直結する他の講座を使うのも一つでしょう。ちなみに、伊藤たける先生の憲法の流儀が非常に評判がよく、ローの友人もおおいに活用しているようです(私には受講経験が無いので、あくまで紹介に留めます)。
 一方で、判例の要点を正確に理解し判例どおりの事例処理ができるようにしておくこと自体は司法試験の形式以前に基礎学力の習得のうえで非常に重要です。未修クラスの期末試験との関係でも、司法試験とは異なり、あくまで授業を踏まえた重要判例の初歩的な理解を試す趣旨にとどまるところ、重問では授業で扱うような判例がそのままアウトプットの題材として採用されており、これを下地として講義内容を加筆修正すれば未修者に要求される学習水準は重問でも満たすことが可能とも考えられるでしょう。また、重問の強みとして、一定レベルまでの知識と典型論点の処理方法を迅速かつ網羅的に学習できる点が挙げられます。重問は問題集というより演習できる百選・事例付きの論証集であり、長大な判例から試験で必ず書くべきことを抽出して端的にまとめているので、その範囲では判例学習にかける時間を大幅に短縮可能です。特に前期は週2回の財産法の予習が膨大で憲法等の勉強が後手に回りがちなことから、重問を利用して人権分野全体にかかる論証知識と判例準拠の論点処理方法を速やかに習得し、最低限の労力で授業と期末試験の準備を終わらせて他科目に割く時間を捻出することができれば大きなアドバンテージになります。
 以上のように、重問憲法の持つ特徴も自分の学習方針や目的によって毒にも薬にもなると思いますので、いずれにしても自分がどのような方向での学習が合っているかで採否を決定することになるでしょう。
 
・自力で準備する場合の使用教材
 自力で準備する場合、市販の問題集と入門書で対処することになるのは他と同様です。アガルートの実況論文講義は重問よりも完成度が高いという声もあるほか、伊藤塾の新赤本は掲載問題数が40問と比較的多く網羅性が高いことに加え答案作成のための解説が非常に充実しているので初学者にも扱いやすいと思います。いずれか自分に合うものを選ぶといいでしょう。
 次に入門書については、指定教材にもなっているNBS憲法人権のほか、ストゥディア憲法人権もわかりやすく非常におすすめです。憲法学読本も薄くて分かりやすいと思いますが、あくまで概説書のようなものであり最初の一冊としては端的過ぎて分かりにくいと思われますので、少し勉強が進んでからの知識確認や復習用に使うのが良いでしょう。
 
 
 
法律基礎科目演習
 基礎科目ではありませんが、通年を通して開講される少々特殊な必修科目なので、一応ここで紹介しようと思います。
①授業の形式と内容
 長文の事例が出題されて後日講評が行われます。1か月に1,2回くらいの頻度で開催され、通年で行われる実力テストのようなものですね。2年後期から行われる民事法文書作成という授業でも同様ですが、事実関係の整理や法的な問題点の指摘、攻撃防御構造に沿った法律論の組み立てといった法曹の仕事内容を少し先取りして学生に体験してもらうような授業ですので、あくまで日々の授業で学習することが実際に法的紛争を解決するためどのように活かされてるかをイメージすることに主眼が置かれているように思います。
 成績評価は合否のみで判定され、全7回中4回以上の合格で単位取得となります。もっとも、学習の目安として起案ごとに一応の評価はつきます。
 余談ですが、履修者で司法試験の過去問を解いたり実際に答案を作成することを「起案」と表現する人がいますが、これは当授業では実務で法律文書を作成することを想定しているので答案ではなく起案というべきということで、この呼称が多用されることに起因するように思われます。
 
②使用教材
特に指定教材等はありません。
 
③事前準備と注意点等
 前期に行われる試験は特にそうですが、十分に知識も備わっていない状態で実務的なことをきかれるので誰もまともなことは書けないでしょう。浮足立っても仕方がないですし、これまで紹介したような問題集を普段から解いておく以上の特別な対策も不要だと思います。もっとも、最近の未修でも隠れ既修のような人が増えており、特に事例問題を解いた経験が無い人は早めに問題演習を始めておくことをおすすめします。
 
 
 
 以上です。長々と書き綴ってしまいましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
1年次後期は夏休みあたりに投稿できればと思います。